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▲開発した無鉛絵の具を調合する小川さん。基本は１１色だが、混ぜることで用途は広がる?土岐市内で

　陶磁器業界では、器に彩りを与える「上絵付け」の安全対策に追われている。厚生労働省が近く食品衛生法を改正し、器から溶け出す鉛やカドミウムの基準が厳格化するためだ。当初は来年にも改正される見込みだったことから、陶磁器版“二〇〇七年問題”とも。安全性と芸術性の共存を目指し、関係者の努力が続く。（遠藤康訓）
　土岐市内の陶磁器関係業者でつくる市陶業会議は「鉛毒対策委員会」を組織し、下石陶磁器上絵加工工業協同組合や顔料メーカーなどとともに、鉛を含まない絵の具を開発した。目玉の和絵の具は全十一色。同組合の小川忠計さん（６３）は「九谷など他産地の絵の具と比べてもカラー、使用感ともに優れている」と胸を張る。二月には特許の出願申請を終えた。

　県セラミック研究所は「無鉛絵の具は大きな成果だが、生地によってはうまく色が載らない場合もある。まだまだ改良の余地はある」と指摘。「今後も技術的なアドバイス、講習会などを通して、業界をバックアップしていきたい」と話す。

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　絵の具に鉛が含まれていると、発色がよく、絵付けの際に筆の滑りがよいという利点があった。

　現行の食品衛生法が定められたのは一九八六年。ほぼ二十年ぶりの改正により、鉛とカドミウムの溶出基準が国際標準化機構（ＩＳＯ）準拠になる。容器の形状・用途にもよるが、大半は、現在認められている溶出量の半分以下に規制される。例えばマグカップは、これまでの一リットル当たり五ミリグラムから十分の一の〇・五ミリグラムへと厳しい新基準が待ち受ける。

　県セラミック研究所など、東濃地方の公営四試験場で一万件を超える鉛の溶出量試験を行ったところ、現時点では全体の１・５％が新基準を満たさなかった。しかし、改正食品衛生法では一件でも基準値を満たさなかった場合、出荷製品の全回収が命じられる場合が想定され、対策が急がれている。

　無鉛の絵の具を使う以外に、焼成温度を上げるのも対策の一つ。ただし、設備投資に多額の費用がかかる上、ガス窯などでは均一の温度を保つのは難しいことから、土岐市は本年度、電気炉の改修補助を予算化した。ただ焼成温度を上げることで、発色が悪くなるという課題も残る。

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　安価なアジア製品に押されて不振が続く窯業界。しかし、小川さんは「無鉛絵の具は東アジアや東南アジアに対し、技術的な優位性をもたらす。絵の具や設備の切り替えによりコストはかかるが、逆にチャンスになる可能性も高い」と期待する。

　改正食品衛生法の施行は復活への追い風になるか、それとも逆風になるのか−。その答えは数年後に出る。