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　常に、素材を生かした作品づくりを目指し、土、釉薬（ゆうやく）、焼きを工夫している。一九九〇年ごろから発表している「土の記憶」シリーズはその代表作だ。
　花器では、斬新なフォルム（形）の作品が多いが、実は、釉薬の「たまり」を生かすために生まれたものだったりする。中心から半径が違った半円を組み合わせ、外側の部分が階段状になった作品もその一つ。

　表面は、透き通った美しい仕上がりとなるように釉薬が塗られているが、階段状の部分は、釉薬がたまって濃い緑色となり、色彩にアクセントがつく。また、花器の下部に釉薬が垂れてできた水滴のような形を残すため、四つの足をつけている。半円球に先がとがったしゃれた形だ。

　発想の元は、発掘現場や地層が表れた崖（がけ）。長い時間の流れの中で、土が風化し、幾層にも変化している様子に心ひかれるという。作品内部に設けられるひだのような仕切りは、地層のイメージから広がった。

　同シリーズでは、一九九二年に二種類の土を混ぜ、緑色と赤土色の二つの色が美しく組み合わされた「聖地」で美濃陶芸大賞を受賞。東濃信用金庫の永年保存作品に選ばれている。「土や釉薬などを生かすことを考える中で、形が発展してできる」と話す。

　釉薬は、一貫して木の灰を主成分とした灰釉（はいゆう）を使っている。粘土に鉄分を多くして使う赤土色の「灰釉」作品や、（鉄分がほとんどない）磁器に用いた「青白」作品を手掛ける。

　二〇〇五年には、透明感のあるさわやかな青色が印象的な青白花器「青風」で、二度目の美濃陶芸大賞に選ばれている。この作品は、平面と曲面を組み合わせた斬新なスタイルで注目を集めた。

　多治見市の窯焼きの三代目に生まれ、多治見工業高校窯業専攻科を卒業し、現在は日展会友。「今後も、原始的な灰釉で窯変の妙を取り入れながら、人為的なフォルムを追求していきたい」と意気込む。（妹尾浩和）